タワーマンションの集積度で日本有数の街となった「武蔵小杉」。その「武蔵小杉」のある中原区の人口は26万人を突破し、この20年で一気に約7万人も増加しました。
再開発が進み「住みたい街」に何度もランクインする一方で、共働き世帯の増加、定年年齢の引き上げなどにより、地域コミュニティの基盤である町内会の人材不足が深刻化しています。
立憲民主党中原区市政担当政策委員 高橋みさとさんは、3年前の台風19号が上陸した際、地元上平間第二町会の防災部役員として避難所の運営に携わり、現在の避難所の運営体制と地域コミュニティの現状に強い危機感を感じています。
現在の課題とその解決に向けた具体的な政策について、お話を聞きました。
「3人の幼い命をどうやって守るの?」東日本大震災で芽生えた防災への思い
ー川崎での様々な経験を生かして地域に貢献したいということですが、地域の課題としてあげられている「災害への備え」を意識したきっかけはありますか?
高橋さん:
2011年の東日本大震災発生当時、2歳半の長女、7か月の次男をベビーカーに乗せ、いつくるか分からない余震におびえながら、無我夢中で長男の幼稚園に向かいました。電柱や塀など危険の少ない道を探そうとしましたが安全と思える道などありません。 必死の思いで家に辿りつきましたが、夫は仕事で都内に出ていたため帰宅困難者になり、その日は帰ってきませんでした。 夜明けを待ちながら「幼い3人の命をどうやって守るの?」災害への備えに対する強い意識が芽生えました。
まずは、「自助」の部分で家庭で備蓄品を揃えたりしていましたが、災害時に大都市で生き抜くためには、自助だけでは限界がある。「共助」の部分、周囲と助け合うことが不可欠であるという結論にたどり着き、上平間第二町会の活動に参加するようになりました。
初めての避難所開設と訓練の重要性
ー高橋さんは上平間第二町会の防災部役員として活動されていますが、3年前の台風19号の避難所開設などを通じて感じたことはありますか?
高橋さん:
未曾有の災害では、みんなで助け合わなければ守れない命があります。3年前も平間中学校の避難所開設に携わりました。全てが初めての経験でしたので、私も含め皆さん、無我夢中で動いていましたね。ただ、ママ友と主催していた「上平間おしゃべりカフェ」で、定期的に災害に関する学習をしていたのが役に立ちました。平間中学校の見取り図を使ってHUG(HINANJO UNNEI GAME)をしたこともあったので、赤ちゃん連れの方、ペット連れの方などの避難場所を、学校の先生と相談しながら決めていくということも割とスムーズにできたように思います。日頃からの訓練や学習が本当に大切なんだと感じました。
あれから、3年が経ちます。市や区でも水害に対する備えについては、課題が整理されてきたと思いますが、コロナの影響で、地域での備えが進んでいないことにとても危機感を持っています。
ー具体的にどんな課題がありますか?
各避難所は地域の町会や自治会の役員さんが主なメンバーである「避難所運営会議」によって開設・運営されます。以前から、町会や自治会の役員の皆さまの高齢化や人材不足が問題となっておりましたが、コロナ禍でそれが更に加速しています。このままだと、避難所運営会議が役割を果たすことが難しくなっているのでは、と危惧しています。災害時に避難所開設・運営に携わってくださる地域人材の確保を急いで対応しなければなりません。
また、コロナの影響で避難訓練、避難所開設訓練ができていない地域が沢山あります。地域での防災訓練の開催方法をコロナ禍に対応した形に見直し、開催しやすい・参加しやすいものにしていく必要があります。
さらに、一般的な避難所開設マニュアルではなく、避難所毎に独自のものを整備する必要があります。避難方法についても、地域特性に合わせたものを住民に周知する必要があります。そのためには、行政の支援が必要です。
災害時に地域で活動してくれる人材の確保
ー災害時には避難所が重要な鍵になるのですね。現在の避難所開設にはどのような課題があるのでしょうか?
高橋さん:とにかく、災害時発生時からすぐに活動してくれる人材を確保することが大きな課題です。現在の仕組みだと、町会や自治会で役員をしていないと最初から避難所には携われません。仕事や子育てに忙しい現役世代は、日常的に地域で活動するのは難しい。コロナ禍で地域での行事も減っていて、町会や自治会に関わる機会も減っています。若い方々が町会・自治会活動に参加してもらうハードルがどんどん上がっていると思います。その結果として、災害時に地域で初期対応してくれる人材も確保が難しくなっているのです。
ー難しい課題ですね。何か解決策はあるのでしょうか。
高橋さん:災害時に避難所開設のボランティアとして動いてくださる方を事前に登録しておく仕組みを考えています。3年前の水害の経験から災害への備えを意識した方々は増えていると思います。日常的に地域の活動に参加するのは難しくても、いざという時、地域のために動きたい!という方は結構いらっしゃると感じます。また、在宅勤務も増え、日中に地域にいらっしゃる方も増えています。そういう方々に、災害時の地域ボランティアとして登録をお願いし、災害時には市や区から避難所開設協力のお願いが届く仕組みです。
町会や自治会の活動は、デジタル化が進んでいる地域も少ないので、登録システムやメール・SNSなどによる連絡の仕組みは、行政で用意する必要があると思います。年1回の避難所開設訓練により多くの方が、参加いただけるようになることも期待できます。
ー最後に、市民の皆さんにお伝えしたいことはありますか。
高橋さん:行政の支援ももちろん大切ですが、災害時に一番頼りになるのは、普段からの地域でのつながりです。川崎市でも、地域の横のつながり作りのための支援策を実施していますが、なかなか市民の皆さんに認知されたいません。